カテゴリ:不動産売却コラム / 投稿日付:2026/07/10 13:23
親が遺した古い実家や地方の土地など、不要な不動産を相続したくない場合、法律上「すべてを受け取る」以外に避ける方法があります。
相続が発生した際、財産を引き継がない代表的な手段が「相続放棄」と「限定承認」です。
借金などの負債が多い場合だけでなく、維持管理が難しい不動産の相続を回避したい場合に知っておくべき、これら2つの重要手続きと注意点をわかりやすく解説します。
1. 相続の放棄・限定的な相続における2つの選択肢
相続の手続きには、不動産を含むすべての遺産をどのように扱うかによって、以下の3つの選択肢があります。通常何もしない場合は「単純承認(すべて引き継ぐ)」となりますが、放棄・限定する場合には手続きが必要です。
| 項目 | 相続放棄 | 限定承認 |
|---|---|---|
| 引き継ぐ財産 | すべて放棄(プラスもマイナスも引き継がない) | プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ |
| 手続きの単位 | 各相続人が単独で行える | 相続人全員が共同で行う必要がある |
| こんな場合におすすめ | ・明らかにマイナスの財産(借金)が多い場合 ・不要な不動産の所有権を一切手放したい場合 | ・負債の総額が不明確な場合 ・家業やどうしても残したい財産がある場合 |
| 手続きの期限 | 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内 | |
2.「相続放棄」とは?:すべてを一切引き継がない方法
「相続放棄」とは、被相続人の権利や義務を最初から一切引き継がないことにする手続きです。
- 効果:相続放棄をすると、法律上「最初から相続人ではなかった」ものとみなされます。
- 代襲相続への影響:相続放棄をした場合、その子や孫が代わりに相続人になること(代襲相続)はありません。
- 注意点(不動産の保存義務):2023年(令和5年)4月の民法改正により、相続放棄をした場合でも、相続放棄の時にその不動産を現に占有(実際に居住・利用等)している場合は、次の人(次順位相続人や相続財産清算人)に引き渡すまでの間、自己の財産と同一の注意をもって保存する義務(保存義務)が課されます。全く占有していない不動産であれば保存義務はありません。
3.「限定承認」とは?:マイナスを相殺して引き継ぐ方法
「限定承認」とは、プラスの財産の枠内においてのみ、マイナスの財産(負債)を引き継ぐ条件付きの相続手続きです。
- 効果:遺産の中にどれだけの借金があるか不明な場合でも、プラスの財産を上回る分の負債については返済義務を免れることができます。計算後に遺産が手元に残る可能性もあります。
- 利用の条件:相続人全員が合意し、家庭裁判所へ共同で申し立てる必要があります。1人でも反対する相続人がいる場合は利用できません。
4. 手続きの期限は「3か月以内(熟慮期間)」
「相続放棄」も「限定承認」も、自分が相続の開始を知った時から3か月以内(熟慮期間)に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で申立て手続きを行わなければなりません。
期限を過ぎてしまうと、自動的に「単純承認」をしたとみなされ、不動産の所有権とともに借金などの負債も無条件ですべて引き継ぐことになります。相続財産の調査に時間がかかる場合は、家庭裁判所に期限の延長(伸長)を申し立てることも可能です。
5. よくある質問(FAQ)
Q. 不要な不動産「だけ」を選んで放棄することは可能ですか?
A. できません。
相続放棄は「すべての財産(預貯金、不動産などのプラス財産も、借金や未払金などのマイナス財産も)」を一括して放棄する手続きです。「不要な土地だけを放棄して、預貯金だけを相続する」といった一部のみの放棄は不可能です。
Q. 相続放棄をすれば、実家の固定資産税や管理責任からは完全に解放されますか?
A. 放棄時の状況により異なります。
相続放棄をすれば、以後その不動産の固定資産税の納税義務はなくなります。しかし、相続放棄時点でその物件に「現に占有(住んでいたなど)」していた場合には、次の管理者が決定されるまで対象財産を適切に保全する「保存義務」が残ります。近隣への倒壊リスクなどを防ぐために、放置せず管理を継続するか、相続財産清算人の選任申し立て等の適切な手続きをとる必要があります。

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